NVIDIAやAMDのようにAI半導体を直接設計する企業は注目を集めやすいですが、実際にチップを量産するには数百もの半導体工程が必要です。しかも構造が複雑になるほど、製造装置の重要性はむしろ高まります。今回見るのは、まさにそのど真ん中にいるLam Research 株分析です。
Lam Researchは、その中でもエッチング、成膜、洗浄工程に強みを持つ米国の半導体製造装置メーカーです。特に3D NAND、HBM、先端ロジック、先端パッケージングのように、構造をより深く、より複雑に作り込む分野が伸びるほど、Lam Researchの装置が必要になる工程も増えていく構図です。
2026会計年度のLam Researchの売上高は232億3,300万ドルで、前年から26%増加。純利益も72億6,500万ドルまで拡大しました。2026年6月四半期の売上高は67億2,200万ドルで前四半期比15.1%増、さらに次四半期の売上高ガイダンスとして81億ドルを提示しています。
ただし、株価にはこうした成長期待がかなり織り込まれています。2026年8月28日時点のLRCX終値は301.90ドル。高値からは下げたとはいえ、依然として伝統的な半導体装置株より高いバリュエーションで評価されています。
Lam Researchは何で稼ぐ会社なのか

Lam Researchは、ウェハー上に極薄の膜を形成する成膜、必要な部分だけを精密に削るエッチング、工程中に発生する汚染物質を取り除く洗浄装置を供給しています。半導体回路が微細化し、構造が3次元化するほど、こうした作業の精度は一段と重要になります。
売上構成は大きく分けて、新規の半導体装置を販売するSystems事業と、すでに導入された装置の保守・メンテナンス、部品供給、アップグレードを担うCustomer Support事業の2本柱です。
2026会計年度のSystems売上高は約148億8,500万ドル、Customer Support関連売上高は約83億4,700万ドルでした。新規装置の販売だけでなく、世界中の半導体工場にすでに設置された装置からも継続的に売上が立つビジネスモデルです。
これは半導体装置市況が揺れる局面でかなり重要です。新規ファブ投資が減っても、既存の生産ラインは止められないため、消耗品、保守、性能アップグレードの需要が完全になくなるわけではありません。
2026年6月四半期の業績はかなり強かった

2026年6月四半期の売上高は67億2,200万ドルで、直前の3月四半期の58億4,100万ドルから15.1%増加しました。GAAPベースの売上総利益率は51.7%、営業利益率は37.4%、希薄化後EPSは1.81ドルでした。
非GAAPベースで見ると、売上総利益率は52.0%、営業利益率は38.4%、希薄化後EPSは1.82ドルでした。前四半期の非GAAP EPS 1.47ドルと比べると、わずか1四半期で約24%伸びた計算です。
さらに目を引くのが次四半期のガイダンスです。Lam Researchは2026年9月四半期の売上高見通しを81億ドル±4億ドルと提示しました。非GAAP営業利益率ガイダンスは39.5%、EPSは2.15ドル±0.15ドルです。
つまり、会社が見ている足元の需要環境はかなり強いということです。特にAI投資の拡大が、メモリと非メモリの両方で半導体設備投資を押し上げているという説明がポイントです。
AI半導体が複雑になるほどLam Researchが有利な理由

半導体業界は、以前のように単純に回路線幅を縮めるだけでは性能を高め続けるのが難しくなっています。そのため、NANDはすでにセルを垂直方向に積層し、DRAMも構造がさらに複雑化。ロジック半導体でも新しいトランジスタ構造やバックサイド電力供給のような技術が導入されつつあります。
層をより多く積むには、深くて細い穴を均一に開け、その内部にまで原子レベルで薄膜を形成しなければなりません。この工程でLam Researchのエッチング技術と成膜技術が直接必要になります。
会社は2026年の年次報告書でも、3D構造、マルチパターニング、新素材、先端パッケージングを長期的な装置市場拡大要因として挙げています。AI半導体の性能が上がるほど、単にウェハー投入量が増えるだけでなく、1枚のウェハーを作る工程そのものの難易度が上がる点が重要です。
つまりLam Researchにとっては、AIチップの販売数量増加だけでなく、1個のチップを作るために必要な装置工程数の増加も成長ドライバーになり得ます。
HBMと3Dメモリが重要な成長エンジン
現在のAIサーバーで最重要部品のひとつがHBMです。HBMは複数のDRAMダイを垂直に積み上げて帯域幅を高める方式なので、一般的なメモリよりはるかに複雑な製造工程とパッケージング工程が必要です。
Lam Researchは、HBM製造に必要なエッチング、成膜、銅めっき、深いシリコン貫通電極関連の装置を供給しています。SABRE、Syndion、Strikerといった装置群が、HBMや先端パッケージング領域で活用されています。
3D NANDも長期的に重要です。NANDは積層数が増えるほど、より深い構造を高精度でエッチングする必要がありますが、ここはLam Researchが長年強みを持ってきた分野です。
2026会計年度の装置売上高を市場別に見ると、ファウンドリーが54%、メモリが39%、ロジック・IDMが7%でした。かつてはメモリ依存度が高かったLam Researchが、今ではファウンドリー投資拡大の恩恵もかなり受けている点は見逃せません。
先端パッケージングまで市場を広げている
AI半導体では、チップそのものだけでなく、複数のチップをひとつのパッケージとしてつなぐ技術も重要になっています。GPUとHBMを近接配置し、より多くのチップをひとつのシステムのように動かすには、パッケージング工程の難易度が大きく上がります。
Lam Researchは2026年、オーストリア・ザルツブルクにパネルレベルパッケージングの研究拠点を設立し、SABRE 3Dのような先端パッケージング向け装置も拡充しています。ウェハー単位ではなく、より大きなパネル単位でパッケージを生産できれば、生産性とコストの両面で新しい市場が開ける可能性があります。
研究開発投資もかなり積極的です。Lam Researchは今後5年間で、グローバル研究所ネットワーク拡大に30億ドル超を投じる計画で、2026年8月にはオレゴン研究センターの拡張工事も始めました。
新施設が完成すれば、その研究開発センターのクリーンルーム面積は50%以上拡大する予定です。AI時代は工程変化のスピードが速いため、顧客に近い場所で新工程を素早く試せる力そのものが競争力になっています。
Customer Support事業とキャッシュフローも強み
Lam Researchは新規装置だけを売る会社ではありません。2026会計年度のCustomer Support関連売上高は約83億4,700万ドルで、全売上高の35%超を占めました。
半導体装置は一度導入されると数年単位で使われ、その間に部品交換、定期保守、ソフトウェア・ハードウェアのアップグレードが継続的に必要になります。設置済み装置が増えるほど、将来にわたって繰り返し稼げる土台も大きくなります。
2026会計年度の営業キャッシュフローは約58億6,000万ドルでした。6月末時点の現金および現金同等物は約55億8,000万ドル、総負債は約37億2,000万ドルで、財務体質も比較的安定しています。
こうして装置販売の増加で設置ベースが広がり、その後にCustomer Support売上まで積み上がる構造は、長期投資の視点ではかなり魅力的な事業モデルだと感じます。
株価とバリュエーション、株主還元

2026年8月28日時点のLRCX終値は301.90ドルです。52週高値は438.50ドルだったので、直近高値から見ると約31%下落した水準にあります。
ただ、単純に高値から大きく下げたから割安とは言いにくいです。直近の市場データベースではTTM PERは約55倍、予想ベースのForward PERは約34倍。AI半導体向け装置需要が今後もしばらく強いという期待が、すでに株価にかなり反映されています。
株主還元には前向きです。2026会計年度には自社株買いなどに約38億5,000万ドルを投じ、現金配当として約12億7,000万ドルを支払いました。
さらに2026年8月27日には、四半期配当を従来の1株当たり0.26ドルから0.33ドルへ27%引き上げました。現在の株価ベースで配当利回り自体は約0.4%台と低めですが、増配と自社株買いを同時に進めている点には意味があります。
強みと弱み
強み
• AI投資拡大が、メモリとファウンドリーの設備投資を同時に押し上げています。
• エッチングと成膜は、3D NAND、HBM、先端ロジックのように工程が複雑になるほど重要性が増す分野です。
• 2026会計年度は売上高が26%増、純利益が35.6%増と、実績で成長性を示しています。
• Customer Support事業が年間83億ドル超を生み出し、装置サイクルの変動を一部吸収しています。
• キャッシュ創出力が高く、自社株買いと増配を同時に進めています。
弱み
• 現在のForward PERは30倍を大きく上回っており、半導体装置株の中でもバリュエーション負担は重めです。
• 半導体装置業界は、顧客の設備投資サイクル次第で業績変動が大きくなりやすいです。
• 2026会計年度の売上高全体の34%が中国で発生しており、中国向け輸出規制や米中対立の影響を受けやすいです。
• 2026会計年度は4社の大口顧客が、それぞれ全売上高の16%、15%、12%、12%を占めるほど顧客集中度が高いです。
• AI投資の熱気が鈍ったり、メモリ・ファウンドリーの増設計画が遅れたりすると、高いバリュエーションが一気に修正される可能性があります。
次の決算で確認したいポイントは何か

次四半期でまず確認したいのは、81億ドルの売上高ガイダンスを達成できるかどうかです。6月四半期の売上高が67億2,200万ドルだったことを踏まえると、ガイダンス中央値ベースでは再び大幅な成長を見込んでいます。
-
売上高81億ドル±4億ドルのガイダンスを達成できるか
-
非GAAP売上総利益率52%前後を維持できるか
-
非GAAP営業利益率39.5%前後を達成できるか
-
HBMと先端パッケージング装置の需要増が続くか
-
ファウンドリーとメモリ顧客の設備投資の強さ
-
中国向け輸出規制が売上高に与える影響
-
Customer Support事業の成長率と設置済み装置ベースの拡大が続くか
特に私は、売上成長率と同じくらい利益率を重視したいと思っています。AI投資サイクルが強くても、関税やサプライチェーンコスト、製品ミックスの変化で利益率が落ちるなら、今の高いバリュエーションを正当化しにくくなるからです。
まとめ
Lam Researchは、AI半導体時代にかなり面白いポジションにいる企業です。どの会社のGPUが勝つかを直接当てなくても、より複雑な半導体を作るにはエッチング装置と成膜装置が必要、という産業構造そのものに投資できるからです。
2026会計年度は売上高232億ドル、純利益72億ドルを記録し、次四半期の売上高ガイダンスも81億ドルまで引き上げました。足元の事業環境はかなり強く、HBM、3D NAND、先端パッケージング、次世代ロジックという複数の成長ドライバーを同時に持っています。
個人的に特にいいと思うのは、単に新規装置の販売台数が増えるだけではない点です。装置の設置台数が増えるほど、保守やアップグレード売上も積み上がるので、長い目で見るとCustomer Support事業の価値もさらに大きくなりそうです。
一方で、いちばん気になるのはやはり価格です。2026年8月28日時点で株価は301.90ドルまで下がったとはいえ、Forward PERが約34倍という水準を見ると、かなり高い成長の持続がすでに求められています。業績がいい会社と、株価が割安な会社は同じではありません。
だから私は、Lam Research 株分析を単なるAI関連銘柄として見るより、今後2〜3四半期にわたって80億ドル台の売上高が本当に維持されるのか、HBMと先端パッケージング需要が実際の装置受注につながるのか、そして50%台の売上総利益率を守れるのかを確認しながら見ていくのがいいと思っています。
現在の事業競争力はかなり強い一方で、株価もそれに見合う高い期待を背負っています。結局、Lam Research投資でいちばん大事なのは、AI半導体の成長そのものより、その成長が実際のウェハー製造装置投資としてどれだけ長く続くかです。
出典
• Lam Research 2026会計年度 Form 10-K
• Lam Research 2026年6月四半期 決算発表
• Lam Research 2026年6月四半期 Earnings Presentation
• Lam Research 公式製品資料およびAdvanced Packaging資料
• Lam Research グローバル研究開発投資に関する発表
• Lam Research 増配発表、2026年8月27日
• SchwabおよびYahoo Financeの市場データ(2026年8月28日時点)
#LamResearch #LRCX #LamResearch株分析 #米国株 #米国株分析 #半導体株 #半導体製造装置 #AI半導体 #HBM #3DNAND #先端パッケージング #エッチング装置 #成膜装置 #米国成長株 #NASDAQ #海外株 #株式投資 #米国株投資