Intuitive Surgical(ISRG)株分析|Da Vinci 5と反復収益が支える手術ロボットの強さ

手術ロボット分野で真っ先に名前が挙がる企業を1社選ぶなら、Intuitive Surgicalは外せません。主力のda Vinci手術システムを軸に、すでに世界中の病院で大規模な導入実績を築いていて、実際の手術件数も着実に伸びています。

2026年2Qの売上高は28億9,200万ドルで、前年同期比19%増。da Vinciの手術件数は約88万9,000件で15%増、肺の組織検査などに使われるIonの症例件数は約4万7,900件で36%増でした。

とくに重要なのは、ロボットを1台売って終わりのビジネスではないことです。手術が行われるたびに器具やアクセサリーが使われ、導入済みの装置からはサービス売上も発生します。設置台数が増え、手術件数が伸びるほど、繰り返し収益が積み上がる構造です。

ただし、優れた企業であることは市場もすでに織り込み済みです。2026年8月28日時点のISRG終値は372.60ドル、予想PERはおよそ33倍。52週高値からは大きく下げたとはいえ、伝統的な医療機器メーカーと比べると、なお高いプレミアム評価を受けています。


Intuitive Surgicalは何で稼ぐ会社なのか

Intuitive Surgicalの事業の柱は、大きく3つに分けられます。

1つ目は、da VinciやIonといったシステム販売です。病院が新しい手術ロボットを購入したり、リースで導入したりする際に売上が立ちます。

2つ目は、Instruments and Accessoriesです。実際の手術で使う各種器具やアクセサリーから生まれる売上です。

3つ目は、Serviceです。すでに病院へ設置された手術ロボットの保守・メンテナンスや各種サービスによる収益です。

2026年2Q時点では、器具・アクセサリー売上が17億3,500万ドル、システム売上が6億8,500万ドル、サービス売上が4億7,200万ドルでした。

器具・アクセサリーとサービスを合計すると約22億700万ドル。全体売上の約76%に当たります。

つまりこの会社の本質は、新規ロボット販売だけで業績が決まるのではなく、すでに導入された装置から継続的に新しい売上が生まれる点にあります。


2026年2Q決算はかなり力強い内容でした

2026年2Qの売上高は28億9,200万ドルで、前年同期の24億4,000万ドルから19%増加しました。

GAAPベースの営業利益は9億7,200万ドルで、前年の7億4,300万ドルから約31%増加しました。

GAAPベースのIntuitive Surgical帰属純利益は8億1,800万ドル。前年の6億5,800万ドルと比べると約24%の成長です。

希薄化後EPSは1.81ドルから2.29ドルへ上昇しました。

非GAAPベースでは純利益が10億ドルまで伸び、希薄化後EPSは2.80ドル。非GAAP売上総利益率も70.0%に達しました。

もっとも、今四半期には過去に支払った関税の還付に関連する税引後2,800万ドルの利益が含まれています。希薄化後EPSベースで約0.08ドルに相当するため、基礎的な収益力を見る際はこの点も考慮しておきたいところです。


手術件数が増えるほど反復収益も大きくなる

長期投資の視点でIntuitive Surgicalを見るなら、私は新規ロボット販売台数よりも、実際の手術件数を重視すべきだと考えています。

2026年2Qのda Vinci手術件数は約88万9,000件で、前年同期比15%増でした。

Ionの症例件数は約4万7,900件で、36%増加しました。

手術が増えれば、器具やアクセサリーの使用量も自然と増えます。実際、2QのInstruments and Accessories売上も前年同期比18%増の17億3,500万ドルを記録しました。

つまり会社にとっては、装置を1台設置した瞬間に、その病院で今後発生しうる手術件数を土台に、長期の売上源を確保することになります。

病院側にとっても、手術ロボット導入後は医療スタッフのトレーニング、手術プロセスの構築、装置活用のノウハウが積み上がっていきます。

こうした設置基盤と医療現場の経験は、新規参入企業が単に価格を下げるだけでは簡単に崩せない参入障壁になりえます。


Da Vinci 5への切り替えが新たな成長ドライバー

今もっとも重要な製品は、次世代システムのDa Vinci 5です。

2026年2Q、Intuitive Surgicalはda Vinciシステムを合計468台新規設置しました。前年同期の395台から18%増です。

このうちDa Vinci 5は246台でした。前年同期の180台から大きく増えています。

注目したいのは、新規da Vinci導入の半分以上がすでにDa Vinci 5だったことです。

6月末時点の世界全体のda Vinci設置台数は1万1,710台で、前年の1万488台から12%増加しました。

新規システム販売だけでなく、既存病院が次世代機へ入れ替えるアップグレードサイクルにもつながる可能性があります。

さらに、2Qの新規da Vinci設置468台のうち254台はオペレーティングリース方式でした。このうち131台は使用量連動型リースです。

一括販売に比べると初期の売上認識は小さくなりやすいものの、長期的に手術件数と連動した反復収益モデルをつくるうえでは、むしろ追い風になりそうです。


Ionも第2のプラットフォームとして急成長中です

da Vinciが会社の中核事業であることは間違いありませんが、Ionの伸びも見逃せません。

Ionは、肺の奥にある病変などへアプローチし、組織検査を行えるよう設計されたロボット支援気管支鏡プラットフォームです。

2026年2QのIon症例件数は約4万7,900件で、前年同期比36%増でした。

6月末時点のIon設置台数は1,096台で、前年の905台から21%増加しました。

2Qの新規設置は55台でした。

まだda Vinciと規模を比べる段階ではありませんが、Intuitiveが手術ロボット1本にとどまらず、診断や低侵襲治療の領域へプラットフォームを広げられる点は大きな意味があります。

長い目で見れば、da VinciのようにIonでも導入台数が増え、症例件数が積み上がり、器具やサービス売上が伸びていけば、新たな反復収益の柱になる可能性があります。

会社はda VinciとIonに加えて、デジタルソリューションも継続的に拡大しています。将来的には、ロボット装置そのものだけでなく、手術プロセスで生まれるデータやソフトウェアまで含めた1つのエコシステムを築こうとしているように見えます。


現金と財務体質はかなり盤石です

2026年6月末時点で、Intuitive Surgicalが保有する現金・現金同等物・投資資産は約86億3,000万ドルでした。

前四半期比では約6億5,000万ドル増えています。

同時点の総負債は約25億8,000万ドルです。現金と投資資産が総負債を大きく上回っており、財務基盤はかなり安定しています。

成長企業でありながら、外部から継続的に資金調達しなければならない構造ではなく、自前の営業キャッシュフローで研究開発や生産設備の拡張を進められる会社です。

研究開発投資も増え続けています。2026年2QのR&D費用は約3億7,100万ドルで、前年の約3億1,300万ドルから増加しました。

現在の手術ロボット市場での地位を守るには、次世代ロボット、器具、ソフトウェア、診断プラットフォームへの継続投資が欠かせません。そう考えると、R&D増加そのものは長期的に必要なコストだと見ています。


株価とバリュエーション、株主還元

2026年8月28日時点のISRG終値は372.60ドルです。

52週の株価レンジは328.57〜603.88ドル。高値からは約38%下落した水準です。

現在の時価総額は約1,316億ドルです。

直近12カ月売上高は約110億3,000万ドル、純利益は約31億4,000万ドルです。

TTM PERは約42.7倍、予想PERは約33倍の水準です。

過去の高値から株価がかなり下がったとはいえ、絶対的なバリュエーションが低いとは言いにくいです。

それでも市場は、Intuitiveが長期にわたって2桁の手術件数成長と高い収益性を維持すると見ているわけです。

配当は実施していません。

その代わり、自社株買いは進めています。2026年2Qには約9万株ではなく90万株を、3億8,000万ドルで買い戻しました。

手元資金は十分で、発行株式数も直近1年で減っているため、株主還元の面では前向きに評価できます。


強みと弱み

強み

・da Vinci手術件数が15%成長しており、装置導入後の反復収益基盤が着実に広がっています。
・全売上の約76%が器具・アクセサリーとサービス由来で、新規装置販売だけに依存していません。
・da Vinciの設置台数は1万1,710台まで増え、強力なグローバルネットワーク効果を持っています。
・Da Vinci 5の新規設置が246台まで増え、次世代システムへの移行サイクルが進んでいます。
・Ion症例件数が36%成長しており、新しい低侵襲プラットフォームも急速に拡大しています。
・現金・投資資産を約86億ドル保有しており、研究開発や事業拡大を自己資金で進められます。

弱み

・予想PERは約33倍と、医療機器企業の中でも依然として高いバリュエーションです。
・病院の設備投資が鈍ったり金利が高止まりしたりすると、新規システム導入のタイミングが後ろ倒しになる可能性があります。
・医療機器という性質上、FDAを含む各国規制当局の承認や製品安全性の問題が事業に大きく影響する可能性があります。
・手術ロボット市場の競争が激しくなると、長期的には価格やシェアへの圧力が強まるおそれがあります。
・関税やサプライチェーンコストは、売上総利益率に直接影響する要因です。
・高い期待がすでに株価へ織り込まれているため、手術件数の成長率が鈍化した場合、バリュエーション調整も大きくなりやすいです。


次の決算で確認したいポイント

会社は2026年通期のda Vinci手術件数成長率を13.5〜15.5%と見込んでいます。

現時点では、このレンジの中間あたりに着地するとの見方です。

2026年の非GAAP売上総利益率見通しは68〜69%。この数字には、関税による約1ポイントのマイナス影響が織り込まれています。

今後チェックしたい項目は次の通りです。

  1. da Vinci手術件数の成長率が14〜15%前後を維持できるか

  2. Ion症例件数の成長率が30%超を継続できるか

  3. Da Vinci 5の設置比率がさらに高まるか

  4. da Vinci全体の設置台数が1万2,000台を超えるか

  5. Instruments and Accessories売上が手術件数と連動して伸びるか

  6. 非GAAP売上総利益率68〜69%の見通しを維持できるか

  7. 関税が実際の利益率に与える影響が想定以上に大きくならないか

  8. オペレーティングリースと使用量連動型リースの比率がどう変化するか

とくに私は、新規ロボット販売台数だけを見るのではなく、手術件数と器具・アクセサリー売上の成長率をセットで追っていくつもりです。

長期的にIntuitive Surgicalの企業価値を決めるのは、何台ロボットを売ったかよりも、すでに設置された1万台超のロボットでどれだけ多くの手術が繰り返されるかだからです。


まとめ

Intuitive Surgicalを見ていくと、なぜ手術ロボット業界でこれほど高く評価されているのか、自然と納得できます。

2Qは売上高が19%増、純利益が約24%増、da Vinci手術件数も15%増。すでにかなり大きな企業規模に達しているのに、なお2桁成長を維持しています。

何よりビジネスモデルが優秀です。ロボットを販売したあとも、手術が行われるたびに器具・アクセサリー売上が発生し、装置にはサービス売上も積み上がります。

2Q時点では、こうした器具・アクセサリーとサービス売上が全体の約76%を占めました。導入台数が増えるほど、反復収益の土台も厚くなる構造です。

Da Vinci 5への切り替えも重要な局面に入っています。新規設置468台のうち246台がDa Vinci 5でした。今後、既存病院での入れ替え需要まで本格化すれば、新たなシステム売上サイクルにつながる可能性があります。

Ionもまだ規模は小さいものの、症例件数は36%増、設置台数も21%増としっかり伸びています。da Vinci以外の第2プラットフォームが実際に育ってきている点も前向きに見られます。

一方で、株価がなお割安とは言いにくいのも事実です。600ドル台の高値から372.60ドルまで下げたとはいえ、予想PERは約33倍あります。

いい会社だからといって、買い値まで魅力的とは限りません。

だから私はISRGを見るとき、株価が高値からどれだけ下がったかよりも、Intuitive Surgical 株分析として本当に大事な、da Vinci手術件数が今後も10%台半ばで伸びるか、Da Vinci 5への移行が続くか、そして反復収益比率が維持されるかを先に確認したいと考えています。

この3つが保たれるなら、Intuitive Surgicalの長期競争力も大きく揺らぎにくいはずです。逆に、手術件数の成長率が急速に鈍るなら、Intuitive Surgical 株分析の前提そのものを見直す必要が出てきます。

出典

・Intuitive Surgical 2026年2Q決算発表
・Intuitive Surgical 2026年2Q Form 10-Q
・Intuitive Surgical Q2 2026 Investor Presentation
・Intuitive Surgical Investor Relations資料
・StockAnalysis市場データ、2026年8月28日時点

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